その家はりっぱな家で、オルガンのほかにピアノや蓄音機などがありました。
露子は、なにを見ても、まだ名まえすら知らない珍しいものばかりでありました。そしてそのピアノの音を聞いたり、蓄音機に入っている西洋の歌の節など聞きましたとき、これらのものも海を越えて、遠い遠いあちらの国からきたのだろうかと考えたのであります。昔、村の小学校時代にオルガンを見て、懐かしく思ったように、やはり懐かしい、遠い、感じがしたのであります。
その家には、ちょうど露子の姉さんに当たるくらいのお方がありまして、よく露子をあわれみ、かわいがられましたから、露子は真の姉さんとも思って、つねにお姉さま、お姉さまといって懐きました。
よく露子は、お姉さまにつれられて、銀座の街を歩きました。そして、そのとき、美しい店の前に立って、ガラス張りの中に幾つも並んでいるオルガンや、ピアノや、マンドリンなどを見ましたとき、
「お姉さま、この楽器は、みんな外国からきましたのですか。」
と問いました。お姉さまは、
「ああ、日本でできたのもあるのよ。」
といわれました。山形 歯医者 Blogri|gaidoのブログ