下湯島の村は、数年前全戸殆ど火の禍をうけたため、家は皆新しい。上湯島には萱葺の屋根多きにここは板屋に石を載せて置く。家は小さいが木は多いから、さすがに柱は太い。村というても平地は殆どないが、やや緩やかな傾斜地に麦が作ってある。畑の中には大きな石がゴロゴロしている。家の廻りには鍬の把、天秤棒、下駄など、山で荒削りにされたまま軒下に積まれてある。
宗忠は身仕度をして来た、なにか獲物もあろうというので一挺の銃も持っている。
早川を渡ると、すぐ急傾斜の小さな坂で、その上は畑が作られて、麦の緑は浅い。石道をゆき、草の中をゆき、いよいよ雑木茂れる山にかかる。道は落葉に埋められ、今朝おりた霜の白きもあり、融けて濡れたのもある。とかく辷り勝ちで足の運びは鈍い。
自動車保険見積り tomosibi - 暗夜に灯を失う