2012年12月19日水曜日

葉子の良人戯画家坂本

 葉子の良人戯画家坂本は、元来、政治家や一般社会性の戯画ばかり描いて居たが、
その前年文学世界という純文芸雑誌から頼まれて、文壇戯画を描き始めて居た。文壇の事に晦い坂本はその雑誌記者で新進作家川田氏に材料を貰い、それを坂本一流の瓢逸また鋭犀に戯画化して一年近くも連載した。これは文壇の現象としてはかなり唐突だったので、文人諸家は驚異に近く瞠目したし、読者側ではどよめき立って好奇心を動かし続けた。なかで麻川氏の戯画化に使われた材料は麻川氏近来の秘事に近いもの――それももちろん川田氏から提供された材料だった。文壇に晦かった坂本が、さして秘事とも思わず取扱った材料は、麻川氏にとっての痛事だったとあとで坂本に云う人がかなりあった。 「そりゃあ気の毒だったな。川田君も一寸つむじ曲りだから先輩に対する自分のうっぷん散しでもあったかな、いくらか。」  とその材料を持って来た川田氏への心理批判も交って坂本は苦笑した。 残業代請求 弁護士 未払い残業代請求とは