「いいや、だめなんだよ」彦太は首をふったが「しかしねえ、ひょっとすると、あれはいつだか五助ちゃんがいった青髪山の魔神の血じゃないかと思うんだ」
「魔神の血だって。魔神のからだにも血があるのかしらん」
五助は目を丸くして彦大の顔を見つめる。
「それはぼくの想像だよ。とにかくこの穴の奥へ入って、もっと探してみようじゃないか」
彦太は先に立って、穴の奥へ進んだ。穴は行きどまりのように見えた。だが、持ってきたつるはしをふるっで、土の壁を四五回掘ってみると、急に土ががらがらと崩れて、その奥に暗い穴があいた。
「やっぱりそうだ。この奥に穴がつづいているんだ」
二人は、電池灯をふりかざして、その奥へ足を踏み入れた。
「でっかい穴だね」
「兄さんが掘った穴ではないようだね。もうずいぶん古くからあった穴らしい」
穴の壁は岩のようにかたくなっていて、地質がちがっていた。いよいよ空気はつめたく、そしてどこからか滴の落ちるような音がきこえた。彦太があっと叫んで、前へのめった。彦太の電池灯がふっと消えた。