何も、朦朧と露れたって、歴々と映ったって、高が婦じゃないか。婦の姿が見えたんだって言うじゃないか。何が、そんなに恐いものか。」
「別に見えたって訳じゃない。何だか寝台の周囲を歩行いたんだが、そう、どっちにしても婦らしく思われた――それがすぐに、息の詰るほど厭な心地だったんではないけれども、こう、じとじとして、湿っぽくッて、陰気で、そこらに鯰でも湧出しそうな、泥水の中へ引摺込まれそうな気がしたんで、骨まで浸透るほど慄然々々するんだ。」
と肩を細うして、背で呼吸をする。
「男らしくもない、そんな事を言って梅雨期はどうします、まさか蓑笠を着て坐ってやしまい。」
「うむ、何、それがただのじとじとなら可いけれど、今云う泥水の一件だ、轟と来た洪水か何かで、一思に流されるならまだしもです――灯の消えた、あの診察処のような真暗な夜、降るともつかず、降らないでもない、糠雨の中に、ぐしゃりと水のついた畔道に打坐って、足の裏を水田のじょろじょろ流に擽ぐられて、裙からじめじめ濡通って、それで動くことも出来ないような思いを一度して見たまえ。」
と力強く云って、また小松原は溜息で居る。
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