2012年6月23日土曜日

向う側の湯屋に柳がある


向う側の湯屋に柳がある。此間を、男も女も、一頃揃つて、縮緬、七子、羽二重の、黒の五紋を着て往き來した。湯へ行くにも、蕎麥屋へ入るにも紋着だつた事がある、こゝだけでも春の雨、また朧夜の一時代の面影が思はれる。
つい、その一時代前には、そこは一面の大竹藪で、氣の弱い旗本は、いまの交番の處まで晝も駈け拔けたと言ふのである。酒井家に出入の大工の大棟梁が授けられて開拓した。藪を切ると、蛇の棄て場所にこまつたと言ふ。小さな堂に籠めて祭つたのが、のちに倶樂部の築山の蔭に谷のやうな崖に臨んであつたのを覺えて居る。池、亭、小座敷、寮ごのみで、その棟梁が一度料理店を其處に開いた時のなごりだと聞いた。
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