「水差が漏るのかな……」
亀裂でも入っていたろう。
「洋燈から滲出すのか……」
可厭な音だ。がそれにしては、石油の臭がするでもなし……こう精神が濛としては、ものの香は分るまい。
断念めるつもりにしたけれども、その癖やっぱり、頻りに臭う。湿っぽい、蒼くさい、汗蒸れたのが跳廻る。
「ソレまた……」
気にすると、直ぐに、得ならず、時めく、黒髪の薫が颯と来た。
「また夢か。」
いつまで続く、ともうげんなりして、思慮が、ドドドと地の底へ滅入り込む、と今度は、戸棚の蔽が纏って、白い顔にはならない替りに、窓の外か、それとも内か、扉の方角ではなしに、何だか一つ、変な物音……沈んだ跫音。
六
その音は――今しがた聞え出した、何かを漏れて、雫の落ちる不快な響が、次第に量を増して、それの大きくなったもののようでもあるし、新たに横合から加わったもののようでもある。
何しろ、同一方角に違いない。……開けて寝た窓から掛けて、洋燈がそこで消えた卓子の脚を伝って床に浸出す見当で、段々判然して、ほたりと、耳許で響くかとするとまた幽になる。幽になって外の木の葉を、夜露が伝うように遠ざかる。――が、絶えたり続いたりと云うよりは、出つ入りつ、見えつ隠れつするかに聞えて、浸出すか、零れるか、水か、油か、濡れたものが身繕いをするらしい。
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