念のために、他所見ながら顔を覗いて、名を銘々に心に留めると、決して姫が殖えたのではない。定の通り十二人。で、また見渡すと十三人。
……式の最初、住吉詣の東雲に、女紅場で支度はしたが、急にお珊が気が変って、社へ参らぬ、と言ったために一人俄拵えに数を殖やした。が、それは伊丹幸の政巳と云って、お珊が稚い時から可愛がった妹分。その女は、と探ってみると、現に丸官に呼ばれて、浪屋の表座敷に居ると云うから、その身代りが交ったというのでもないのに。……
それさえ尋常ならず、とひしめく処に、搗てて加えて易からぬは、世話人の一人が見附けた――屋台が道頓堀を越す頃から、橋へかけて、列の中に、たらたら、たらたらと一雫ずつ、血が落ちていると云うのである。
二十九
一人多い、その姫の影は朧でも、血のしたたりは現に見て、誰が目にも正しく留った。
灯の影に地を探って、穏ならず、うそうそ捜ものをして歩行くのは、その血のあとを辿るのであろう。
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