「さて、どうも更りましては、何んとも申訳のない御無沙汰で。否、もう、そりゃ実に、烏の鳴かぬ日はあっても、お噂をしない日はありませんが、なあ、これえ。」
「ええ。」と言った女房の顔色の寂しいので、烏ばかり鳴くのが分る。が、別に織次は噂をされようとも思わなかった。
平吉は畳み掛け、
「牛は牛づれとか言うんでえしょう。手前が何しますにつけて、これもまた、学校に縁遠い方だったものでえすから、暑さ寒さの御見舞だけと申すのが、書けないものには、飛んだどうも、実印を捺しますより、事も大層になります処から、何とも申訳がございやせん。
何しろ、まあ、御緩りなすって、いずれ今晩は手前どもへ御一泊下さいましょうで。」
と膝をすっと手先で撫でて、取澄ました風をしたのは、それに極った、という体を、仕方で見せたものである。
oono's Wedding 船頭多くして船山に登るさんのCOTOBACO