「訳のないこと、子供衆でも誰でも出来る。ちょいと水をつけておいて、柔かにぐいぐいとこう遣りさえすりゃ、あい、鷹化して鳩となり、傘変わって助六となり、田鼠化して鶉となり、真鍮変じて銀となるッ。」
「雀入海中為蛤か。」と、立合の中から声を懸けるものがあった。
婦人はその声の主を見透そうとするごとく、人顔をじろりと見廻わし、黙って莞爾して、また陳立てる。
「さあさあ召して下さい、召して下さいよ。御当地は薬が名物、津々浦々までも効能が行渡るんでございますがね、こればかりは看板を掛けちゃ売らないのですよ。一家秘法の銀流、はい、やい、お立合のお方は御遠慮なく、お持合せのお煙管なり、お簪なり、これへ出してお験しなさいまし、目の前で銀にしてお慰に見せましょう、御遠慮には及びません。」
といってちょいと句切り、煙管を手にして、莨を捻りながら、動静を伺って、
「さあさあ、誰方でもどうでござんす。」
若い同士耳打をするのがあり、尻を突いて促すのがあり、中には耳を引張るのがある。止せ、と退る、遣着けろ、と出る、ざまあ見ろ、と笑うやら、痛え、といって身悶えするやら、一斉に皆うようよ。有触れた銀流し、汚い親仁なら何事もあるまい、いずれ器量が操る木偶であろう。
「姉や。」
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