「気味の悪いもんですね、よく見るといかにも頭つきが似ていますぜ。」
男衆は両手を池の上へ出しながら、橋の欄干に凭れて低声で云う。あえて忍音には及ばぬ事を。けれども、……ここで云うのは、直に話すほど、間近な人に皆聞える。
「まったく、魚じゃ鯔の面色が瓜二つだよ。」
その何に似ているかは言わずとも知れよう。
「ああああ、板の下から潜出して、一つ水の中から顕れたのがあります。大分大きゅうがすせ。」
成程、たらたらと漆のような腹を正的に、甲に濡色の薄紅をさしたのが、仰向けに鰓を此方へ、むっくりとして、そして頭の尖に黄色く輪取った、その目が凸にくるりと見えて、鱗のざらめく蒼味がかった手を、ト板の縁へ突張って、水から半分ぬい、と出た。
「大将、甲羅干しに板へ出る気だ。それ乗ります。」
と男衆の云った時、爪が外れて、ストンと落ちた。
が、直ぐにすぼりと胸を浮かす。
「今度は乗るぜ。」
やがて、甲羅を、残らず藻の上へ水から離して踏張った。が、力足らず、乗出した勢が余って、取外ずすと、ずんと沈む。
被リンク 最新SEO対策教材ランキング:by SEOテンプレートのQ*T