飯のつけやうも効々しい女房ぶり、然も何となく奥床しい、上品な、高家の風がある。
白痴はどんよりした目をあげて膳の上を睨めて居たが、
(彼を、あゝ、彼、彼。)といつてきよろ/\と四辺を※す。
婦人は熟と瞻つて、
(まあ、可ぢやないか。そんなものは何時でも食られます、今夜はお客様がありますよ。)
(うむ、いや、いや。)と肩腹を揺つたが、べそを掻いて泣出しさう。
婦人は困じ果てたらしい、傍のものゝ気の毒さ。
(嬢様、何か存じませんが、おつしやる通りになすつたが可いではござりませんか。私にお気扱は却つて心苦しうござります。)と慇懃にいふた。
婦人は又最う一度、
(厭かい、これでは悪いのかい。)
白痴が泣出しさうにすると、然も怨めしげに流盻に見ながら、こはれ/\になつた戸棚の中から、鉢に入つたのを取出して手早く白痴の膳につけた。
(はい、)と故とらしく、すねたやうにいつて笑顔造。
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