2012年6月6日水曜日

串戯ではない、お婆さん



「串戯ではない、お婆さん、お前は見懸けに寄らぬ剽軽ものだね。」
「何でござりますえ。」
「いいえさ、この団子は、こりゃ泥か埴土で製えたのじゃないのかい。」
「滅相なことをおっしゃりまし。」
 と年寄は真顔になり、見上げ皺を沢山寄せて、
「何を貴方、勿体もない。私もはい法然様拝みますものでござります。吝嗇坊の柿の種が、小判小粒になればと云うて、御出家に土の団子を差上げまして済むものでござりますかよ。」
 真正直に言訳されて、小次郎法師はちと気の毒。
「何々、そう真に受けられては困ります。この涼しさに元気づいて、半分は冗戯だが、旅をすれば色々の事がある。駿州の阿部川餅は、そっくり正のものに木で拵えたのを、盆にのせて、看板に出してあると云います。今これを食べようとするのを見てその人が、」
 と其方を見た、和郎はきょとんと仰向いて、烏も居らぬに何じゃやら、頻に空を仰いでござる。
「唐突に笑うから、ははあ、この団子も看板を取違えたのかと思ったんだよ。」
「ええ、ええ、いいえ、お前様、」
 とこざっぱりした前かけの膝を拍き、近寄って声を密め、
「これは、もし気ちがいでござりますよ。はい、」
 と云って、独りで媼は頷いた。問わせたまわば、その仔細の儀は承知の趣。


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