2012年6月9日土曜日

頃刻悄乎して居たつけ

「頃刻悄乎して居たつけ。 (貴僧嘸お疲労、直ぐにお休ませ申しませうか。) (難有う存じます、未だ些とも眠くはござりません、前刻体を洗ひましたので草臥もすつかり復りました。) (那の流れは其麼病にでもよく利きます、私が苦労をいたしまして骨と皮ばかりに体が朽れましても半日彼処につかつて居りますと、水々しくなるのでございますよ。尤も那のこれから冬になりまして山が宛然氷つて了ひ、川も崖も不残雪になりましても、貴僧が行水を遊ばした彼処ばかりは水が隠れません、然うしていきりが立ちます。  鉄砲疵のございます猿だの、貴僧、足を折つた五位鷺、種々な者が浴みに参りますから其の足痕で崖の路が出来ます位、屹と其が利いたのでございませう。  那様にございませんければ恁うやつてお話をなすつて下さいまし、淋しくつてなりません、本当にお可愧しうございますが恁麼山の中に引籠つてをりますと、ものをいふことも忘れましたやうで、心細いのでございますよ。 被リンクに、10位以内表示の条件 : 他愛もないブログにも意味はある ブログ | 烏に反哺の孝あり