2012年6月4日月曜日

がらがらと通ったのは


 がらがらと通ったのは三台ばかりの威勢の可い腕車、中に合乗が一台。
「ええ、驚かしゃあがるな。」と年紀には肖ない口を利いて、大福餅が食べたそうに懐中に手を入れて、貧乏ゆるぎというのを行る。
 処へ入乱れて三四人の跫音、声高にものを言い合いながら、早足で近いて、江崎の前へ来るとちょっと淀み、
「どうもお嬢さん難有うございました。」こういったのは豆腐屋の女房で、
「飛んだお手数でしたね。」
「お蔭様だ。」と留という紺屋の職人が居る、魚勘の親仁が居る、いずれも口々。
 中に挟ったのが看護婦のお縫で、
「どういたしまして、誰方も御苦労様、御免なさいまし。」
「さようなら。」
「お休み。」
 互に言葉を交したが、連の三人はそれなり分れた。
 ちょっと彳んで見送るがごとくにする、お縫は縞物の不断着に帯をお太鼓にちゃんと結んで、白足袋を穿いているさえあるに、髪が夜会結。一体ちょん髷より夏冬の帽子に目を着けるほどの、土地柄に珍しい扮装であるから、新造の娘とは知っていても、称えるにお嬢様をもってする。
 お縫は出窓の処に立っている弥吉には目もくれず、踵を返すと何か忙しらしく入ろうとしたが、格子も障子も突抜けに開ッ放し。思わず猶予って振返った。
「お帰んなさい。」


何よりも被リンクが重要なんです ? さらに早く最速で駆け抜ける お得なクレジットカード比較