「狐か、狸か、今のは何じゃい、どえらい目に逢わせくさった。」
と饂飩屋は坂塀はずれに、空屋の大屋根から空を仰いで、茫然する。
美しい女と若い紳士の、並んで立った姿が動いて、両方木賃宿の羽目板の方を見向いたのを、――無台が寂しくなったため、もう帰るのであろうと見れば、さにあらず。
そこへ小さな縁台を据えて、二人の中に、ちょんぼりとした円髷を俯向けに、揉手でお叩頭をする古女房が一人居た。
「さあ、どうぞ、旦那様、奥様、これへお掛け遊ばして、いえ、もう汚いのでございますが、お立ちなすっていらっしゃいますより、ちっとは増でございます。」
と手拭で、ごしごし拭いを掛けつつ云う。その手で――一所に持って出たらしい、踏台が一つに乗せてあるのを下へおろした。
「いや、俺たちは、」
若い紳士は、手首白いのを挙げて、払い退けそうにした。が、美しい女が、意を得たという晴やかな顔して、黙ってそのまま腰を掛けたので。
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