「エピキユウルの園」の思想家、ドレフイイユ事件のチヤンピオン、「ペングインの島」の作家だつた彼もここでは面目を新たにしてゐる。尤も唯物主義的に解釈すれば、彼の頽齢や病なども或は彼の人生観を暗いものにしてゐたかも知れない。しかしこれは彼の作品中、比較的等閑に附せられたものを、――或は事実上出来の悪いものを(たとへば「赤い卵」の如き)彼の一生の文芸的体系に結びつける綱を与へてゐる。病的な「赤い卵」なども彼には必然な作品だつたのであらう。僕はこの対話や書簡集から更に新らしい「アナトオル・フランス論」の書かれることを信じてゐる。
このアナトオル・フランスは十字架を背負つた牧羊神である。尤も新時代は彼の中に唯前世紀から今世紀に渡る橋を見出すばかりかも知れない。が、世紀末に人となつた僕はやはりかう云ふ彼の中に有史以来の僕等を見出してゐる。
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