2012年2月9日木曜日

この寺の縁起によると

この寺の縁起によると裳層のついていたのは塔のみではなく、金堂の二重の屋根もまたそうであったらしい。大小伸縮した四層の大金堂は、東塔の印象から推しても、かなり特殊な美しさのものであったろう。後に上重閣(じょうじゅうかく)のみが大風に吹き落とされたと伝えられているのから考えると、その構造も大胆な思い切ったものであったに相違ない。このような建築が薬師寺にのみあったのかどうかは知らないが、とにかく奈良遷都時代の薬師寺に一種風変わりな建築家のいたことは確かである。しかもそのころにこの寺は熱狂的伝道者行基を出している。もしそこに必然の関係があるならば、この寺の持つ特殊な意義は非常に大きい。
 わたくしたちは金堂と東院堂との間の草原に立って、双眼鏡でこの塔の相輪(そうりん)を見上げた。さらに早く最速で駆け抜ける