2013年5月23日木曜日

前進性を示す諸作

 二科が会友に福島金一郎氏を推したのは聡明であつた、この人の作は場中で光彩を放つてゐた、力量からみてもこの人など既に重鎮組の作家であらう、
棟方寅雄、吉原治郎、石井万亀(石井氏この人の感覚的な鋭さはその辺りの偽前衛作家のやうな付け焼刃ではない)高岡徳太郎、江崎義郎、古家新(鳩舎)島崎鶏二、竹谷富二雄、梨本正太郎、森繁、松下義晴の諸氏など追求的で野心的な快ろよい制作意図を示してゐた、彫刻は中村暉氏の良きヒューマニティ、河合芳雄氏の作では女の重量感を腰のくびれで堅めた技術的洗練さ、渡辺小五郎氏の美しい線、長谷川八十氏の激しい意慾的な仕事など彫刻は相当粒揃ひであつた、今回の二科は形容してみれば平静にして前進的な佳作揃ひと言つてよい、画壇に於ける二科会の社会的立場を以て、移は単純に保守的地位に見ることをしたくない、前衛的といふ意味では独立展は二科より一歩の長があると言はれてゐる、然し画風の上を検討してみると、二科の洋画家には独立展に較べて始末に負へない日本主義者といふのが案外少ない、彫刻に渡辺義知氏の系統をひいた、国土を護れ式の傾向が若い彫刻家の作風にちらちらしてゐるが、結局渡辺氏の制作意図といふものも、制作上の精力主義からきた現れにすぎなくて必ずしも反自由主義的作風とは断定できないものがある。 調布 歯科 徒花に実は生らぬ