「番太郎……お若い方は御存じありますまいね」と、半七老人は説明してくれた。
「むかしの番太郎というのは、まあ早く云えば町内の雑用を足す人間で、毎日の役目は拍子木を打って時を知らせてあるくんです。番太郎の家は大抵自身番のとなりにあって、店では草鞋でも蝋燭でも炭団でも渋団扇でもなんでも売っている。つまり一種の荒物屋ですね。そのほかに夏は金魚を売る、冬は焼芋を売る。八幡太郎と番太郎の違いだなどと冗談にも云われるくらいで、あんまり幅の利いた商売じゃありませんが、そんな風に何でもするので、なかなか金を溜めている奴が多うござんしたよ」
その番太郎のとなりに小さい筆屋があって、その女房が暮れ六ツ(午後六時)過ぎに急に産気づいた。夫婦掛け合いの家で、亭主は唯うろうろするばかりであるので、お倉はすぐに取り上げ婆さんを呼びに行った。そんな使いをたのまれて幾らかの使い賃を貰うのが、番太郎の女房の役得であった。お倉は気丈な女で、殊にまだ宵の口といい、この頃は町内の警戒も厳重なので、かれは平気で下駄を突っかけて駈け出した。取り上げ婆さんの所は四、五町もはなれているので、お倉はむやみに急いで行った。今夜も霜陰りという空であったが、両側の灯はうす明るい影を狭い町に投げていた。すぐに来てくれるように取り上げ婆さんに頼むと、婆さんは承知して一緒に来た。ファンド設立・ファンド組成 - ファンド監査 銀座悠和公認会計士共同事務所 miuseo_新浪?博客_Qing: ??生活 分享?趣