するとまた或日来た青年の手紙は強請的な哀願にしおれて、むしろかの女の未練やら逡巡やらのむしゃむしゃした感情を一まとめにかき集めて、
あわや根こそぎ持ち去って行きそうな切迫をかの女に感じさせた。それが何故かかの女を歯切れの悪い忿懣の情へ駆り立てた。
「馬鹿にしてる。一ぺんだけ返事を出してよく云って聞かしてやりましょうか」
縺れ出しては切りのないかの女の性質を知っている逸作は言下に云った。
「考えものだな。君は自分のむす子に向ける感情だけでも沢山だ。けどこないだの晩は君の方から働きかけたんだから逢ってやっても好いわけさね」
彼女は結局どうしようもなかった。こだわったまま妙な方面へ忿懣を飛ばした。――少くともかかる葛藤を母に惹起させる愛憐至苦のむす子が恨めて仕方がなかった。何も知らずに巴里の朝に穏かに顔を洗っているであろうむす子が口惜しく、いじらしく、恨めしくて仕方なかった。
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