「いよいよ、永年憧れていた恋人が、やって来たぞ」そういったのは、旗艦陸奥の士官室に、其の人ありと聞えた剽軽な千手大尉であった。
「ほほう、どの位、近づいたのか」バットの煙を輪に吹きながら、戦略家の藤戸大尉が訊ねた。
「主力の位置は、本日の唯今、北緯四十二度、東経百六十五度。北海道の真東、千八百キロというところだ」
「すると、敵艦隊は、今日になって、進路を急に西の方へ、向け直したことになるぞ」
「藤戸の云うとおりだ」横から相槌を打ったのは、先刻から黙々として、探偵小説に読みふけっていた紙洗大尉だった。「布哇から、ミッドウェーの東方沖合を、北西に進んでいた筈だから今日になって、進路を真西に向けたとなると……」
「そりゃ、こうサ」藤戸大尉が即座に引取って答えた。「いよいよ敵艦隊は、吾が艦隊と決戦を覚悟したのだ。これから敵艦隊は、南西へ下りて来るぞ。決戦の日の位置は北緯四十度東経百五十度附近と決った」
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