「しかし角が生えていますよ。角の生えている人間がすんでいるなんて、私は聞いたことがない」
「そうだ、角が生えている。これは私たちが昔話で聞いた青鬼というものじゃないでしょうか」
「なにをいうんだ、ばかばかしい。今の世の中に青鬼なんかがすんでいるものですか。君は気がどうかしているよ」
「でも、そうとしか考えられないではないですか。それとも君は、なにかしっかりした考えがあるのですか」
「そういわれるとこまるが、とにかく私はね、この人間が着ている鎧をぬいでみれば、早いところその正体がわかると思うんだがね」
「鎧ですって。鎧ですか、これは。しかし、きちんと体にあっていますよ」
「きちんと身体に合っている鎧は、今までにもないことはありませんよ。中世紀のヨーロッパの騎士は、これに似た鎧を着ていましたからねえ」
「中世紀のヨーロッパの騎士の話なんかしても、仕方がありませんよ。ここはアジアの日本なんだからねえ。それに今は中世紀ではありませんよ。それから何百年もたっている皇紀二千六百十年ですからねえ」
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