途中、田畝道で自殺をしますまでも、私は、しかしながらお従い申さねばなりますまい。
あるいは、革鞄をお切りなさるか、お裂きになるか。……
すべて、いささかも御斟酌に及びません。
諸君が姑息の慈善心をもって、些少なりとも、ために御斟酌下さろうかと思う、父母も親類も何にもない。
妻女は亡くなりました、それは一昨年です。最愛の妻でした。」
彼は口吃しつつ目瞬した。
「一人の小児も亡くなりました、それはこの夏です。可愛い児でした。」
と云う時、せぐりくる胸や支え兼ねけん、睫を濡らした。
「妻の記念だったのです。二人の白骨もともに、革鞄の中にあります。墓も一まとめに持って行くのです。
感ずる仔細がありまして、私は望んで僻境孤立の、奥山家の電信技手に転任されたのです。この職務は、人間の生活に暗号を与えるのです。一種絶島の燈台守です。
そこにおいて、終生……つまらなく言えば囲炉裡端の火打石です。神聖に云えば霊山における電光です。瞬間に人間の運命を照らす、仙人の黒き符のごとき電信の文字を司ろうと思うのです。
が、辞令も革鞄に封じました。受持の室の扉を開けるにも、鍵がなければなりません。
被リンクと相互リンクについて - 31 May 2012 - Blog - 穏便な言い訳これで問題なし miuseo_新浪?博客_Qing: ??生活 分享?趣