それに様子をお見届け下さいますれば、どんなにか難有うございましょう。」
としみじみ、早口の女の声も理に落ちまして、いわゆる誠はその色に顕れたのでありますから、唯今怪しい事などは、身の廻り百由旬の内へ寄せ附けないという、見立てに預りました小宮山も、これを信じない訳には行かなくなったのでありまする。
「そりゃ何しろとんだ事だ、私は武者修行じゃないのだから、妖怪を退治るという腕節はないかわりに、幸い臆病でないだけは、御用に立って、可いとも! 望みなら一晩看病をして上げよう。ともかくも今のその話を聞いても、その病人を傍へ寝かしても、どうか可恐しくないように思われるから。」
と小宮山は友人の情婦ではあり、煩っているのが可哀そうでもあり、殊には血気壮なものの好奇心も手伝って、異議なく承知を致しました。
「しかし姐さん、別々にするのだろうね。」
「何でございます。」
「何その、お床の儀だ。」
「おほほ、お雪さんにお聞きなさいまし。」
「可煩いな、まあ可いや。」
「さようならば、どうぞ。」
「可し可し。そのかわり姐さん、お前の名を言わないのじゃ……、」
「手前は柏屋でございます。」
と急いで出て行く。
これからお雪、良助、寝物語という、物凄い事に相成りまする。
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