2012年6月28日木曜日

このあたりを、ちらほらと


このあたりを、ちらほらと、そぞろ歩行の人通り。見附正面の総湯の門には、浅葱に、紺に、茶の旗が、納手拭のように立って、湯の中は祭礼かと思う人声の、女まじりの賑かさ。――だぶだぶと湯の動く音。軒前には、駄菓子店、甘酒の店、飴の湯、水菓子の夜店が並んで、客も集れば、湯女も掛ける。髯が啜る甘酒に、歌の心は見えないが、白い手にむく柿の皮は、染めたささ蟹の糸である。
みな立つ湯気につつまれて、布子も浴衣の色に見えた。
人の出入り一盛り。仕出しの提灯二つ三つ。紅いは、おでん、白いは、蕎麦。横路地を衝と出て、やや門とざす湯宿の軒を伝う頃、一しきり静になった。が、十夜をあての夜興行の小芝居もどりにまた冴える。女房、娘、若衆たち、とある横町の土塀の小路から、ぞろぞろと湧いて出た。が、陸軍病院の慰安のための見物がえりの、四五十人の一行が、白い装でよぎったが、霜の使者が通るようで、宵過ぎのうそ寒さの再び春に返ったのも、更に寂然としたのであった。


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