可しさ、それも。
と、そこへ、酒肴、水菓子を添えて運んで来た。するとね、円髷に結った仲居らしいのが、世話をして、御連中、いずれもお一ツずつは、いい気なもんです。
さすがに、御寮人は、頭をちょっと振って受けなかった。
それにも構わず……(さあ一ツ。)か何かで、美濃から近江、こちらの桟敷に溢れてる大きなお臀を、隣から手を伸して猪口の縁でコトコトと音信れると、片手で簪を撮んで、ごしごしと鬢の毛を突掻き突掻き、ぐしゃりと挫げたように仕切に凭れて、乗出して舞台を見い見い、片手を背後へ伸ばして、猪口を引傾けたまま受ける、注ぐ、それ、溢す。(わややな、)と云う。
そいつが、私の胸の前で、手と手を千鳥がけに始ったんだから驚くだろう。御免も失礼も、会釈一つするんじゃない。
しかし憎くはなかったぜ。君の親方が舞台に出ていて、皆が夢中で遣る事なんだ。
憎いのは一人狂犬さ。
やっと静まったと思う間もない。
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