2012年5月30日水曜日

道学先生の、その坂田礼之進であるから


道学先生の、その坂田礼之進であるから、少くともめ組が出入りをするような家庭? へ顔出しをする筈がない。と一度は怪んだが、偶然河野の叔父に、同一道学者何某の有るのに心付いて、主税は思わず眉を寄せた。
諸家お出入りの媒妁人、ある意味における地者稼の冠たる大家、さては、と早やお妙の事が胸に応えて、先ずともかくも二階へ通すと、年配は五十ばかり。推しものの痘痕は一目見て気の毒な程で、しかも黒い。字義をもって論ずると月下氷人でない、竈下炭焼であるが、身躾よく、カラアが白く、磨込んだ顔がてらてらと光る。地の透く髪を一筋梳に整然と櫛を入れて、髯の尖から小鼻へかけて、ぎらぎらと油ぎった処、いかにも内君が病身らしい。
さて、お初にお目に懸りまする、いかがでごわりまするか、ますます御翻訳で、とさぞ食うに困って切々稼ぐだろう、と謂わないばかりな言を、けろりとして世辞に云って、衣兜から御殿持の煙草入、薄色の鉄の派手な塩瀬に、鉄扇かずらの浮織のある、近頃行わるる洋服持。どこのか媒妁人した御縁女の贈物らしく、貰った時の移香を、今かく中古に草臥れても同一香の香水で、追かけ追かけ香わせてある持物を取出して、気になるほど爪の伸びた、湯が嫌らしい手に短い延の銀煙管、何か目出度い薄っぺらな彫のあるのを控えながら、先ず一ツ奥歯をスッと吸って、寛悠と構えた処は、生命保険の勧誘も出来そうに見えた。

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