2012年11月22日木曜日

そうですよ

「そうですよ。あなたは、あれがただの過失だなんて思ったら大間違いです。レールの上へ峯吉の鶴嘴を転がして置いて、闇の中で女を抱きとめ、夫婦の習慣と女の安全燈を利用して、炭塵に点火したんです。あれは実際陰険きわまるやり口ですよ。ああして置けば、あとで監督局の調査があった時にも、発火の責任は、自分のところへは来ませんからね」 「しかし、何故また、あの採炭場に火をつけたりしたんだ」 「それですよ」と技師は次第に声を高めながら云った。 「さっきも云いましたように、それはあの採炭場の中に、或る時期までは絶対に人に見せてならないものがあったからなんです。だから、ああして発火坑にして人を入れないことにし、そしてまた、あとからその扉を開けようとして熱瓦斯の検査にかかった丸山技師と、工手を同じ目的のために片附けてしまったんです。するとあなたは、ここで、じゃア何故我々だけは無事にあの扉を開けることが出来たのか、って訊かれるでしょう。それは、もうその時、或る時期が過ぎたからなんです。しかも、あの時私みたいな男がやって来て、それまで皆んなの考えが、折角監督の思う壺にはまって来ているのに、もしもこの殺人が坑殺者への復讐であるなら、監督も今度は殺されなければならないなぞと云い出したものですから、切羽詰って穴倉の峯吉の屍体をずり出し、いかにも自分がやられたように見せかけて、炭車に人知れず潜り込んで厳重な警戒線を突破り、もう用もなくなったこの滝口坑から逃げ出そうとしたんです」 「待ってくれたまえ」係長が遮切った。 バイク・原付の鍵紛失、鍵がなくてもお作りします - 東京、埼玉、さいたま市 忠言は耳に逆らう - FrontPage