2012年9月24日月曜日
うん、君は、びっくりしたろう
「うん、君は、びっくりしたろう。しかし、わけは、簡単なんだ。このモール博士というのは、もと、われわれの祖国ドイツにいた科学者だ。博士は、ナチスのため祖国を追われて、このベルギーへ移ったが、そのとき、モール博士と同僚だった私の父、すなわちヘルマン博士の秘密研究をうばって、逃げてしまったんだ。しかも私の父は、モール博士のために毒を盛られ、とつぜん心臓麻痺で倒れてしまったので、博士のやった悪事が、永い間、わからなかったのだ。でも、ドイツ官憲の、懸命な捜索から、モール博士の所在がわかり、私は、身分をかくして博士の門下となり、盗まれた秘密の研究を、とりかえそうと、くるしい努力をしていたのだ。君か私かのどっちかが、どうかなってしまえば、図面が半端になり折角の苦心も水の泡になったところだ。だがA型人造人間をエッキス光線でしらべて、廻らない二つの歯車があるところから君の持っていたあの図面だけでは、完全な人造人間が出来ないことを推論したフリッツ大尉は、私以上の殊勲者だ。君を、わざと逃がして、その行手に、モール博士が待っていることをいいあてたのは、もちろん私だが、こうもうまくいくとは思わなかった。とにかく、父ののこした貴重な研究を、とり戻して、こんなうれしいことはない」
そういって、ハンス少尉は、私とニーナの手を、かわるがわる、つよく握ったのであった。ハンスの父ヘルマン博士の研究による完全人造人間の部隊は、いずれそのうち、欧洲戦線のどこかに、必ず姿をあらわして、ドイツ軍に刃向う敵軍を、徹底的に圧迫するにちがいない。
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