「射ち方始めッ」
警笛がピリピリと鳴る。眩むような、青白色の太い火柱がサッと空中に立った。照空灯が点火したのだ。三条の光芒は、行儀よく上空でぶっちがった。
光芒の中に、白く拭きとったような丁字形が見えた。三つ! 果して敵の重爆撃機の編隊だ。見なれないその異様な恰好!
一秒、二秒、三秒……
高射砲は、息詰るような沈黙を見せている。射撃指揮手は、把手をグルグルと左右に廻して目盛を読もうと焦っている。遂に敵機の方向も速力も出た。数字を怒鳴る。
一、二、三。
「ウン」
どどどーッ、どーン。
血のように真紅な火焔が、立ち並ぶ砲口からパッと出た。トタンに、照空隊はスーッと消えて、あたりは真の暗にかえる。だが眼の底には、さっきの太い光の柱が焼けついていて消えない。
陣地の隊員はひとしく、何事かを予期して真暗な上空を睨み、瞳孔を一杯に開いた。
ぱーッ。
紅と黄との花傘を、空中に拡げたように、空一面が思いがけない光と色とに塗られた。その光のうちに、弾かれたように飛び散る敵の司令機があった。二番機も、あおられたように一揺れすると、白い両翼がバラバラに離れ散った。
そのあとに恐ろしい空気の震動が押し寄せたかと思うと、俄かに天地はグラグラとゆらいだ。砲弾の作裂音だ。
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