この話を聞いて妻はそれでは私も砧を打ってみようという。夕霧は、一旦は良家の女人の業でないと止めるが、その熱心さにひかされて砧を部屋の中にしつらえ二人で互に打つというのが謡「砧」の筋ですが、左の章句が良くこの情景を現わしています。
「いざいざ砧を打たんとて馴れし襖の床の上、涙かたしき狭筵に思いをのぶる便りぞと夕ぎり立寄り主従とともに、恨みの砧打つとかや、衣に落つる松の声/\、夜寒を風やしらすらん」
秋酣の、折しも円らかなる月のさし出づるころで都にある夫を想いながら空の一角を仰いで月を見、これから砧を打とうというところの妻女を、肖像のような又仏像のような気持で描いて見たものです。砧は黒漆が塗ってあるもので、灯台の蝋燭の灯のゆらぎに動きを齎してあります。
(昭和十三年)
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