『雷が鳴るときに』とエミルが云ひました。『アムブロアジヌお婆あさんはあはてゝ窓や扉を閉ますよ。』
『アムブロアジヌお婆あさんは他の沢山の人達のやうに、その危険な事を見るのをやめるのが安全だと信じてゐるのだ。だから雷の音を聞かないやうに或は電光を見ないやうに、自分で閉ぢこもつてしまふのだ。だが、そんな事をしても、危険は少しも減りはしないのだ。』
『その時にとる予防方法はないんですか?』とジユウルが尋ねました。
『その予防方法は普通の条件ではない。それは神様の意志にたよるより他はないのだ。
『他のよりはずつと高い建物を保護するのには、吾々は避雷針と云ふものを使ふのだ。此の驚くべき発明は、フランクリンの考へに基いたものだ。避雷針といふのは、強い、尖つた、長い鉄の竿で組立てたもので建物の頂上に取りつけたものだ。その避雷針の底からは、また他の鉄の竿が出てゐて、それは屋根と壁とに沿ふて走つてゐる。そこはしつかりと、鋲でとめてある。そしてその先きは湿つた地面の中か、或はもつとよくするには深い水の中へ突つ込む。もし雷がその建物に落ちると、それは避雷針を撃つ。避雷針は、雷に一番近い物体で、なほ、その金属の本質に従つてもつとも電気をよく通すのに適してゐる。同時に、その尖つた形は一層その効目をよくする。雷が其処に落ちると、その金属の避雷針はそれを導いて、何の損害も与へないで地面の中に消してしまふ。』